2002年2月24日〜3月10日奈良民報連載
歴史の事実をみない奥野氏の妄言をのりこえ歴史はすすむ

            日本共産党奈良県委員会国政対策委員長・弁護士
 佐藤まさみち

 朝日新聞奈良版は元旦号から7回、「政道38年 奥野誠亮代議士の素顔」を連載しました。日本共産党奈良県委員会の佐藤まさみち国政対策委員長(弁護士)は、奥野衆院議員の発言は黙過できないとして、批判文を朝日新聞奈良支局に届けました。その全文を紹介します。

 わたくしは、主権者国民の代弁者として政府を監視すべきマスコミが、最近とみに「右傾化」=「政権へのすりより」を強めていることに強い危機感を抱いてきました。
 それは一〇月八日、アフガニスタンへのアメリカの空爆報道にも端的に示されるものとなりました。空爆が始まった直後に出された六一本の社説と論説は、強弱の違いはあっても、すべて空爆支持、軍事行動の正当性を主張するというありさまです。
 米軍の空爆開始を今か今かと期待する論調、「国旗と顔の見える支援」を当然の前提としたキャンペーン、自衛隊参戦法案の「早期成立は与野党の共同責任」との社説まで飛び出す始末です。
 一方、ニューヨーク・マンハッタンでの数千人規模の反戦デモ、またイタリア二五万人、ロンドン四万人、ベルリン三万人の反戦集会やデモは報じません。
 「国連中心の法の裁きと制裁を」と訴える不破議長・志位委員長連名の二通の「書簡」を世界一三〇か国の政府に送ったこともほとんど報道せず、四千人から二万五千人規模の「報復戦争反対」の三度にわたる東京での大集会やデモも黙殺です。
 また、小泉「改革」に対するマスコミの報道姿勢がこれまた異常です。病人が財布の中身と相談しながらでないと医者にかかれないような医療制度にすることのどこが改革でしょうか。それなのにマスコミは「改革を急げ」の大合唱です。こうしたマスコミ報道とその姿勢に危機感と批判を強めているのは私だけではないと思います。
 そして新年早々の朝日新聞奈良県版の紙面です。元旦号のその紙面を見て、わが目を疑いました。戦前からの内務官僚で、特高課長のキャリアを持つ超タカ派の奥野代議士の「初夢三題」と題するインタビュー記事が、紙面を埋めつくしていました。
 しかも、その特集が七日間連続で掲載です。世界の平和と日本の進路、奈良県の現在と将来にわたる重要な問題で、憲法も戦後の民主主義も足蹴にする奥野氏の暴論、妄言が垂れ流しされた七日間でした。「朝日」紙が、この奥野氏のインタビュー記事を各界の識者らの意見を紹介する「日本の進路を考えるシリーズ企画」の最初の記事としている以上、県民としても黙過できない問題にしぼって意見を述べるものです。

アメリカの報復戦争を賛美し、戦前への逆戻りの反動的野望を吐露

 第一にテロと報復戦争の問題、そしてマスコミの問題についてです。
 元旦号で、奥野氏は「初夢」の第一のところで、国際テロの問題にふれました。テロにたいして「アメリカは国対国でない、『新しい戦争』と言った。あれを『戦争』と決め付けたところがアメリカのすごいところだね」「米国民もあれだけ憤慨し、燃え上がっている。日本国民もあんな国民に戻したいね」などと述べています。この同氏の発言は、平和を願う県民としては絶対に容認できないものです。
 昨年九月アメリカ・ニューヨークで発生した同時多発テロは、人類文明を否定する、最悪の歴史の逆流でした。同時に、それにたいする報復戦争も二十世紀に人類がかちとった世界の平和の秩序にさからう逆流にほかなりません。
 アフガニスタンにおけるタリバン政権は崩壊しましたが、報復戦争の結果、数千人のなんの関係もないアフガニスタン市民が犠牲になり、平和の国際ルールが破壊される事態をうみました。アメリカが報復戦争の目的としたテロの首謀者と見られるウサマ・ビン・ラデン氏の逮捕はできないばかりか、アメリカは戦争の拡大を公言するにいたりました。それは、戦火をさらにひろげ、新しい憎しみを生み、テロの温床を拡大する結果となるでしょう。すでに、NATO諸国からさえ、戦争の拡大に対して厳しい批判が集中しているように、アメリカの国際的孤立は避けられなくなるでしょう。また、小泉政権が「テロ対策」に乗じて、アメリカのいいなりに憲法九条に明確に違反する参戦法を強行し、戦闘地域であるインド洋に自衛隊を派兵するにいたりました。
 日本共産党は、国際危機に際して、二度にわたって各国政府に書簡を送り、報復戦争ではなく、国際法にもとづく制裁と裁きによる解決を訴えました。そして、国連を中心に国際世論の包囲のなかで、テロ勢力を徹底的に孤立させ、この地球上どこにも彼らの逃げ場がなくなるところまで追い詰めることを提唱して、奮闘してきました。また、平和を熱望する広範な国民とともに、参戦法と自衛隊の派兵に反対してたたかいました。こうした人類の理性にそくした平和への努力をおこなうことこそ、憲法九条をもつ日本の責務であり、ここにこそ、二一世紀に日本が生きる道があるのではないでしょうか。
 奥野氏のテロ問題での発言は、「『新しい戦争』と言った」ことを、「アメリカのすごいところだね」として、アメリカの報復戦争を手放しで賛美しています。そして「日本国民もあんな国民に戻したいね」と、日本国民を侵略戦争にかりだした戦前の状況に逆戻りさせたいという氏の反動的野望を露骨に述べるありさまです。

 そのうえ、「侵略という言葉を使うのは嫌だし、当時日本にはそういう意図はなかった」「従軍慰安婦は商行為に参加した人で強制ではなかった」などの数々の〃問題発言〃について、「日本人は日本人を悪く言い過ぎているんだ。自虐の精神にあふれていますよ」「私は日本の名誉を守りたい。今の若者に、この国はそんなに悪い国だと思いこませたくないんだよ」「しょっちゅう侵略戦争をやったとか残虐行為をやったと言われるけれども、私はけんかは両方悪いと思ってるんです」などと、歴史の事実をねじまげる発言を言いたい放題です。
 アジアの人々に対する侵略戦争や残虐行為について、心から謝罪し、その上で平和友好の関係を築いていこうと努めることは自虐的、卑屈な態度であって、「日本は何も悪いことはしなかった」と開き直る人々を「愛国者」なのだと言うのです。しかし、そうでしょうか。私は過ちを犯した場合は、被害者に率直に謝罪し、二度と過ちを繰り返さないことを固く誓って努力するのが人間の道と考えます。いつまでたっても奥野氏はこのことがわからないようです。
 井上ひさしさんが「日本国の犯した間違いをひたすら覆い隠そうとする日本人は、一見愛国者に見えて、実は国民の質を貶(おとし)め、この国の市民を地球社会から永遠に隔離しようとする売国奴であり、日本国の過ちをするどく指摘する日本人こそ、一見売国奴に見えて、その実は比類なき愛国者なのだ」と指摘しています(不破哲三著「歴史教科書と日本の戦争」)が、かみしめたい言葉だと思います。
 そのうえで、朝日新聞をはじめマスコミ各社にも考えてもらいたい重要な問題が、ここにあります。
 朝日新聞は終戦直後に「自らを罪するの弁」という社説を書き、国民に真実を伝えずに、政策批判をすることなく、ただただ戦争に駆り立て、あおり立ててきた新聞の責任は極めて重いと痛烈な自己批判をしました。さらに役員が総辞職し、「今後の朝日新聞は、全従業員の総意を基調として運営さるべく、常に国民とともに立ち、その声を声とするであらう…日本民主主義の擁立途上来るべき諸々の困難に対し、朝日新聞はあくまで国民の機関たることをここに宣言するものである」と「国民と共に立たん」と題する宣言を公表しました。
 ところが、奥野インタビュー記事にみられるように、この「戦後の原点」を忘れつつあると危惧しているのは私一人ではないでしょう。あえて指摘をしておきたいと思います。

県民にわざわいもたらす奥野氏の「初夢」

 第二に、このインタビューは奈良県の将来にとっても、絶対にみすごせない問題を投げかけていることです。
 奥野氏が「元気な奈良へ初夢三題」で挙げたのは、「関西文化学術研究都市」を育てること、リニア中央新幹線の実現、大極殿院の復元です。これらは、すべて関西財界・柿本県政が一体となって進めている国家的プロジェクトの内容そのものです。いずれも奥野氏の独創的な提言ではなく、これらが奥野氏の「初夢」だとしても、果たして県民に何をもたらすものであるかについては、一つひとつ厳しい吟味が必要です。
 第一に、奥野氏は「生駒市の奈良先端科学大学院大学を中心とした関西文化学術研究都市を育てたい」としています。すでに開設されている先端科学大学院大学の充実・発展は重要な課題であることはいうまでもないことです。しかし、「関西文化学術都市」は京都府南部地域と奈良県北部地域での大規模な住宅開発をすすめる計画が大きな比重を占めており、それに関連していま県政上で重要問題になっていることは、奈良県と都市整備公団がすすめる高山地区第二工区(計画面積二八八ヘクタール)建設推進の是非です。
この第二工区がすすめられるならば、地元生駒市は公共投資として四四九億円以上もつぎ込まなければならなくなるのです。これは、生駒市の財政を破綻させるとともに、貴重な緑地を破壊する計画として厳しい批判がまきおこっているものです。ゼネコンが喜ぶ無駄な公共事業の典型であり、地元生駒市民と県民にとっては、まったく迷惑な計画です。
 第二に、リニア新幹線は膨大な財政が必要であり、その建設が環境に与える影響の吟味が必要で、単純に実現すればいいというものでもないと考えます。奥野氏は「リニアをきっかけに、奈良も大いに発展する」と言っていますが、奈良県の基幹産業である農業・林業や地元産業などの発展を基礎にした産業の内発的な発展でなければ、古都奈良の貴重な文化遺産、自然・景観の大規模な破壊をまねくことは必至です。


「遷都一三〇〇年記念事業」で高速道路建設を促進

 第三に、奥野氏が「初夢」第三番目に掲げている「大極殿院復元計画」は、柿本県政が「遷都一三〇〇年記念事業」の「シンボル」として位置付けているものでもあります。
 この計画はもともと文化庁が一九七八年に策定した「平城遺跡博物館基本構想」にもとづくものです。その「構想」の理念は「静かで落ち着いた古代に思いを馳せるにふさわしい独自の環境を作りだすこと、このために宮跡内には現代的な施設は極力少なくする」としています。柿本県政が強調している「大極殿院等の野外劇場としての多目的活用」するなどのことは文化庁の理念から著しく乖離したものであります。しかも、大極殿の「復原」については、遺跡の保存・活用のあり方、破綻した国家財政の状況などから国民的合意はまだ形成されているとはとても言えないものです。
 なお、改めて指摘しておくべきことは、柿本県政が「世界に光る奈良県づくり」をスローガンにすすめている「遷都一三〇〇年記念」事業そのものの理念です。
 柿本県政はこの「記念事業」を「日本の国のかたち、日本文化の基層を形成した『奈良・平城京』の地から、歴史との対話を通して『日本文化の再生と新たな創造』を目指す」としています。そして、「平城宮第一次大極殿院」の復原を「事業全体の求心力をもたらすシンボルとして位置付け、二〇一〇年までの復原を目指す」としています。さらに、「京奈和自動車道の整備促進」を、「大交流時代の多彩な交流・連携を支えるため高速交通体系を始め広域的な交通ネットワークの整備を図るとともに、二〇一〇年目標」の筆頭に掲げています。
「日本の国のかたち、日本文化の基層を形成した『奈良・平城京』の地」とする立場は、今日の日本の成り立ちを数万年〜数千年に及ぶ日本の歴史のなかの特定の時期の政治制度やその段階の経済的・文化的な到達を「国のかたち」と「日本文化の基層」とするものです。まさに、この立場は非科学的で、特定の見解を県政にもちこみ県民に押し付けるものと言わざるをえません。

「地下トンネル計画」は世界遺産に登録の平城宮跡を破壊

 また、京奈和自動車道の建設は、都市計画決定はしていないものの、現在調査中の「地下トンネル計画」は、世界遺産に登録されたばかりの平城宮跡を破壊するものとして、広範な人々の怒りをかっているものです。日本考古学協会をはじめ多くの学術研究団体などが計画の中止を求めています。さらに、奈良市文化財保護審議会も計画に反対する意見書を提出しているではありませんか。
 京奈和自動車道は、奈良県内を通過するのに、延長で五〇km、建設費用は約七五〇〇億円が必要と試算され、その三割が奈良県民の負担となるものです。しかも赤字路線になること、国民・県民に重大な負担をもたらすことは火を見るよりも明らかです。
世界遺産に登録された平城宮跡を破壊する京奈和自動車道の平城宮(京)跡通過は、自動車排気ガスの大気汚染により、文化遺産を破壊するだけでなく、奈良盆地全体に大気汚染をもたらし、古都の自然と景観を破壊し、国民・県民に多大な財政的な負担をもたらすものであり、大和北道路建設計画を根本的に見直すべきです。
 以上に見たように、奥野氏の「初夢」、つまり柿本県政の目玉として推進している「遷都一三〇〇年記念事業」は、計画立案の段階から財界・官僚主導で進められてきたものであり、「四全総」「五全総」にそって、関西財界がすすめてきた関西学術研究都市建設計画の一環として、奈良県の文化財を利用した開発計画であり、重大な問題をはらんでいるものです。

 創立八〇周年迎える 日本共産党の一員として国民が主人公の政治めざす

 いま、世界では国際テロと報復戦争、国内では小泉内閣による憲法やぶりと国民いじめの政治が大変乱暴なやりかたですすめられ、国民のあいだで平和や暮らしへの不安がかってなく大きく広がっています。「朝日」紙上のインタビューで示された奥野氏の暴論、妄言は、国民に大きな不安を広げるこの自民党政治の本音を語ったものです。
今年、日本共産党は党創立八〇周年を迎えることができました。党の八〇年の歴史は、平和と民主主義、自主・独立など社会進歩の促進の立場での不屈の闘争の歴史でもあります。わたくしは、激動の時にあって歴史の本流に立つこの日本共産党の一員として、国民こそが主人公と心からいえる新しい政治を開くため、広範な県民のみなさんと力をあわせてすすむ決意を新たにしているところです。 (おわり)

 

 日本共産党奈良県委員会
 〒630-8014 奈良市四条大路2丁目2-16 TEL:0742-35-5811 FAX:0742-35-5815
 Copyright(C) 2000 JCP NARA. All rights reserved.