奈良市立病院(仮称)の医療充実を求める私たちの提言(案)

2003年1月29 日 日本共産党奈良県委員会

国政対策委員長 佐藤まさみち
奈良県会議員団
はじめに−奈良市立病院としての存続を歓迎し、市民のための市立病院を
 1999年3月に国が統合・廃止計画を発表した国立奈良病院は奈良市が移譲をうけて地域医療振興協会に管理委託する公設民営の奈良市立病院として 2004年度中にスタートすることになりました。日本共産党は「国立奈良病院の廃止反対・存続」「奈良市が移譲をうけて市立病院として存続を」と「国立奈 良病院の存続と地域医療を守る会(以下「守る会」と略す)」をはじめとする市民運動を支持、連帯するとともに、国、県、市への要請、県議会、市議会での質 疑、提言の発表、緊急報告集会の開催などの取り組みをすすめてきたものとして、公的医療が存続されることを心から歓迎するものです。

 国立奈良病院の廃止反対・存続を求める運動は、患者、市民の願い・運動が、国の計画を変更させ、当初、移譲に消極的だった奈良市の姿勢を変えさせてきた 画期的な取り組みでした。同時に、あいつぐ医療、社会保障の改悪にたいし、その防波堤としての自治体のありかたと、安心して住みつづけられる街づくりの具 体化でもあります。
 
 奈良市は2002年11月に基本構想案の発表、12月の市議会に「国立奈良病院の移譲に伴う新病院基本計画の骨子(案)」(以下「基本計画案」と略す)と財政計画(案)が提出され議論がはじまっています。
 基本計画案の「国立奈良病院の機能を継続する」、「小児救急の拡充」など、基本方針は市民運動や日本共産党も求めていた点をふまえたものとして評価するものです。
 しかし、奈良市はこれまで市立病院をもたなかったこともあり、12月市議会での論議は財政問題に集中し、一部の会派からは財政困難な奈良市で市立病院と して存続すること自体に疑問・否定的な意見もだされました。移譲まで1年数ヶ月という限られた期間の中で、病院の基本構想づくりとその具体化、医療の継続 の具体化、財政問題、医師・看護師はじめ職員の確保、協会との契約など山積する課題があります。日本共産党は、自治体の主人公である市民と共に、市民のた めの市立病院づくりをすすめていくためにさらに奮闘する決意です。
 今回の提言は、奈良市が新病院の基本計画を1月中にまとめ、厚生労働省に提出するという機会に、日本共産党として基本計画に盛り込むべきと考える重要な 事項を明らかにしたものです。幅広い市民、患者、医療関係者、行政関係者のみなさんにご一読いただき、ご意見を寄せていただくようお願いをするものです。

1、 奈良市の保健・医療をめぐる状況(救急医療と医療供給体制について)
(1) 2002年4月から奈良市は中核都市となりました。2003年度から5年間の「第3次奈良県保健医療計画」(以下「地域医療計画」と略す)を策定中です が、奈良市はこれまでの北和医療圏内の1市から、奈良市単独で奈良保健医療圏となりました。これにより、奈良市内で「特殊な医療サービスを除く通常の保健 医療供給が過不足なく完結」することが目標とされることになりました。
 地域医療計画にかかる奈良医療圏で基準病床数は、既存病床数に比べなお290床の余裕がありますが、第4次医療法の関係で、2003年8月までに一般病床と療養病床の申請を行うこととなっているため、今後の供給体制には不明な点が多くなっています。
(2) 地域医療計画の救急医療体制では、現在の北和医療圏では県立奈良病院救命救急センターが3次救急体制(生命の危機を伴う重篤救急患者を24時間体制で受け 持つ)として位置付けられています。地域医療計画では県北西部の3次救急の拠点として近畿大学医学部奈良病院を指定し、体制拡充が計られる予定です。2次 救急医療体制(手術・入院を要する救急患者の治療を受け持つ)については、病院群輪番制と救急告示病院により医療を確保しています。奈良市においては輪番 制に国立奈良病院はじめ16病院が、告示病院には14病院が参加しています。
(3) 小児科は、少子化、小児医療の採算困難性、小児科医師の勤務状況の厳しさ等から、全国的に小児科医師及び小児科標榜病院が減少しています。小児救急につい ても充分な体制がとられておらず、小児救急の拡充は国、自治体の課題となっています。現在、北和と中南和の2つのブロックに分けて16の病院で小児科輪番 体制を組んでいます。2次医療圏に対応した体制整備が課題となっていますが、当面は2つのブロックでの対応が続きそうです。奈良市内では、国立奈良病院、 県立奈良病院、済生会奈良病院が参加しています。また、奈良市の休日夜間応急診療所の年齢別患者数(2002年度)では0歳〜6歳が休日で59.8%、夜 間では53.9%と半数以上をしめています。
(4) 高齢出産や多児妊娠、低体重児出生の割合が増加し、ハイリスク妊婦、新生児に対する医療の需要は増大しています。奈良県の体制整備は充分でなく、県外搬送 の率も多くなっています。2001年の周産期(妊娠22週以降生後7日まで)死亡率は全国で5番目に高く県立医大付属病院において体制整備がすすめられて います。奈良市では国立奈良病院はNICU(新生児集中治療室)を6床、県立奈良病院はNICUを10床・PICU(母体集中治療室)を1床備えており、 その役割は重要です。
(5) 奈良市は救急出動件数が1996年(平成8)9000件から、2001年(平成13年)には11465件と5年間で2465件(22.6ポイント)も増加 しています。うちわけ(2000年)では「急病」が34.3%と増加しています。傷病程度別では、死亡・重症の率が12.3%となっています。診療科別で みると、内科42.8%、外科16.2%、小児科5.2%、整形外科15.5%、脳外科12.4%(各科の傷病程度別の死亡・重症率は、内科11.1%、 外科4.2%、小児科2.3%、整形外科9.5%、脳外科20.8%)となっています。
(6)2000年(平成12年)の 奈良市の人口10万人あたりの医師数は181.3名と、全国平均より20.2人も少なく、ベッド数も235.6床も少ない現状です。特に、公的病院、地域 医療の中核となる300床以上の総合病院は、他府県の県庁所在地や中核市と比べて少なく、他方、診療所数は全国平均より14か所多く、病院医療の不足を診 療所が担っている状況が推測されます。

2 国立奈良病院が果たしてきた役割
(1) 国立奈良病院は、救急医療の面でも欠かせない病院です。救急告示、救急輪番を担ってきたのはもちろん、死亡・重症率の高い脳神経外科をもつ市内の数少ない 病院として、役割を果たしてきました。また、小児救急では、北和の小児2次救急輪番体制に参加し、休日では40.7人と県内で1番受け入れ患者数が多い病 院でした。周産期医療では、NICU6床をもち、県の周産期医療情報システムを担ってきました。
(2) 国立奈良病院は、奈良市東部にある唯一の300床超規模の病院として、東部地域の民間病院、開業医と連携し、市民の医療を守ってきました。2000年度の 他の医療機関からの紹介患者数は1621件となっています。また、リウマチ外来など特殊な疾病への対応や、脳神経外科、周産期医療(母子医療)、小児科、 産科など民間の医療機関ではなかなか対応できない分野も担ってきました。

3 市民の願いは
 「守る会」が2002年9月から10月に実施したはがきによる市民アンケートには、数多くの要望がよせられています。アンケートに答えた人のほとんどが 市立病院として国立奈良病院が存続することを歓迎しています。「守る会」がまとめたアンケートの要望の分類(総数802人・複数回答あり)によると「小児 救急・小児科の拡充」が119人(14.8%)、救急80人(9.9%)、親切・信頼・患者対応・インフォームドコンセントなど73人(9.1%)、が上 位を占めています。
 小児救急については、子育て世代に限らず、高齢者も多くが「少子化対策のためにも充実を」などと要望にあげています。

4 市民とともにあゆむ市立病院を
(1)国立奈良病院から「引き継ぐべきもの」として以下の点がかんがえられます。@ 奈良市東部地域の地域医療の中核病院としての位置付けと機能・これまでのネットワーク。A最新の医療技術を提供するとともに、安心・安全な医療の提供に努力し、市民の信頼を得る姿勢。B これまで担ってきた救急医療、小児救急、周産期医療、脳外科、乳ガンなど各科、特殊外来の継続。C これまで積み上げてきた個々の患者情報と信頼関係。D 交通面などの利便性、などを今後に生かすことが必要です。
(2)そのうえで「拡充するもの・見直すもの」として、@ これまでの国の政策医療という視点から、奈良市の医療をどう拡充し、市民のいのち、健康を守っていくかという自治体病院としての視点への転化。A 地域の中核病院としてふさわしい他の医療機関との連携。B 療養環境の改善はじめ周辺施設も含めた整備。C 自治体病院として効率的な運営につとめ、経営を安定させること、などがあげられます。
(3)情報公開と住民参加をつらぬいて
  管理委託先の病院についての情報も不足しています。病院の規模、国との確認事項や市の財政事情等など限られた条件があります。住民要求にどこまで応え ることができるのか、自治体の主人公である住民の合意を尊重し、情報の公開を徹底することが必要です。市は財政もふくめて基本構想を市民にひろく公開し、 説明する責任があります。市民アンケートなどで市民の意見を聞くなど、市民参加で準備をすすめることが重要です。また、名称についても「奈良市立○○病 院」と、奈良市立を冠し、公募も検討して市立病院にふさわしい名称とすべきです。
(4)医療内容を検討する専門チームを
  学識経験者、医師会関係者、行政、委託先病院、市民代表などで構成する「医療体制整備委員会」(仮称)を設置し、診療科目、医療体制、施設、及び医療機器などにかんする調査、検討が必要です。
(5)奈良市の医療計画のなかで病院づくりを
   奈良市の街づくりや市の保健、医療政策や、介護保険事業計画、国民健康保険問題とも連動させて、病院づくりをすすめることが必要です。
(6)市立病院の開設後は、「市立病院運営協議会」(仮称)を設置し、市立病院にふさわしい公的医療の継続、発展をはかることが必要です。協議会には有識者、市民代表などを参加させ、開設後も市民参加で医療内容を発展させることが大切です。

5 市民の願いに答える病院づくり−「救急医療センター」の設置を
 24時間いつでも安心してかかれる、救急医療体制を確立する必要があります。そのためにも、「救急医療センター」として救急部門を独立させ、県立奈良医 科大学の救命科からの医師の派遣など体制を確立し、1次救急(外来診療のみで対応可能な比較的軽症の救急患者の診察を受け持つ)、2次救急の受け入れを積 極的に行う体制づくりが必要です。特に、市民要求の高い小児救急については、専門医の24時間常駐体制を目指し、当面は入院施設、小児科、産科とも連携で きる救急医療センターとして対応することでフォローできるのではないでしょうか。
 また、 現在、医師会に委託し、医師会の献身的努力により対応している休日夜間応急診療所の後方病院として市立病院を位置付けることにより、休日夜間応急診療所の 機能をいっそう高める必要があります。将来的には関係団体との合意をえて西部地域に休日夜間応急診療所を移設し、市立病院の救急医療センターが東部地域の 休日夜間応急診療所の機能もはたすとともに、全市的な1次、2次救急医療の中心的役割を担う体制づくりを検討します。
 市立病院が1次・2次救急に積極的に対応できる受け皿をつくることで、県立奈良病院の3次救急・救命救急の効果をあげることになります。 奈良市医療圏の救急告示病院・輪番病院のネットワークの軸となり、効率的な救急体制の確立をすすめることになるのではないでしょうか。

6 地域の医療機関とのいっそうの連携を−オープンシステムの検討
 市立病院はこれまで国立奈良病院が長年築き上げてきた開業医・中小民間病院とのネットワークを引き継ぎ、いっそうの機能分担と連携を強めることがもとめ られています。医師会の理解と協力を得て、市立であるという特徴を発揮したオープンシステム(開放型病院)の検討をします。オープンシステムはかかりつけ 医の紹介で入院しながら、かかりつけ医が市立病院にも赴いて市立病院の医師と協同で患者の治療をおこなう制度です。現在、奈良県では4病院が開放型病院と して承認されていますが、開業医との連携など、その機能が十分とはいえない状況にあります。地域医療連携室の設置、利用しやすいシステムづくり、連携ベッ ドの確保なども研究する必要があります。
 地域医療支援病院については、紹介率80%以上など条件を満たしていないことや、市民の市立病院との期待とのギャップも大きいことから、今後の検討課題 とする必要があります。また、ホスピス、緩和ケア病棟などについても、今後の検討する課題ではないでしょうか。
 
7 財政問題
(1)建て替えもふくめて財政支出は市民の納得がえられる
 移譲初期の整備費用経費として、外来診療棟や機器の整備に9億4千万円が必要とされています。このうち市の負担は3億2千万円です。残りは国が事前整備費用3億円と施設・設備整備費用補助3億2千万円、計6億2千万円を出すことになっています。
 懸念されているのが建物の老朽化による建て替えですが、市は新病棟を約40億円で建設し、その3割を国の補助金でまかない、残りは病院債を起債して30 年で返済するとしています。機器の更新などもふくめて実質負担額は最高でも年2億円未満とみられ、年間の予算規模が1200億円(一般会計、02年度決 算)にのぼる奈良市が負担できない金額ではありません。市立病院をもつことによる交付金の一部も市の財源となります。
 不採算部門とされる小児救急・周産期医療の市負担分を、市の政策医療として支出することは市民の納得が得られます。
 「救急センター」を設置して運営するには多額の費用がかかりますが、国の制度や補助の研究をさらにすすめることが必要です。
 市民の医療ニーズにこたえながら、診療報酬が加算される国の制度、たとえば急性期入院加算の取得(他の病院、診療所からの紹介率30%、平均在院日数17日以内)なども研究します。
(2)税金の使い道を命を守ること優先に
 深刻な財政難のもとでも、不要・不急の事業は中止・凍結・見直しをすることによって財源は確保できます。また、入札制度の改善で東大阪市では落札率を 8%〜9%下げることで10億円以上の財源が確保することができました。奈良市でも努力が必要です。JR奈良駅南側の再開発の区画整理も現在88億円の総 事業費が発表されていますが、今後9年間での完成は困難でさらに事業費がふくれあがる懸念があります。こうした公共事業を凍結するだけでも財源の確保は可 能です。自治体として、住民の命と健康を守ることを市は優先するべきです。

8 国の医療改悪に反対
 国は2002年10月からあいつぐ診療報酬の改定や老人医療制度の改悪を強行し、2003年4月から健保本人の3割負担などの医療制度の改悪を予定して います。これは患者の経済的負担を増やし、病院にかかりにくくします。市民の健康を損ね、さらに医療機関の経営も圧迫するものです。日本共産党は新しい市 立病院が市民の命と健康を守るとりでとなるためにも、国の医療制度の改悪に反対するものです。
以 上


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