政策と主張

奈良県知事に2024年度予算要望

2024年度奈良県予算編成に関する要望書
重点要望

2023年11月27日

奈良県知事  山下 真 殿

日本共産党奈良県 委員会
委員長  細野  歩
党県常任委員、国政事務所長 井上 良子
党県副委員長 宮本 次郎
         党中南和地区副委員長 太田  敦
         前県議会議員 今井 光子

日本共産党奈良県会議員団
県会議員 山村さちほ

はじめに

 失われた30年といわれる経済不況が深刻です。
この間の自民党政治が財界言いなりにコストカット経済を推進して経済成長がとまり、実質賃金が上がらない国となり、アベノミクスの失 敗、政府の無策で異常な円安がつづき、物価高騰やエネルギーの高騰など、県民の暮らしと営業が直撃されています。  相次ぐ消費税増税とインボイス制度の導入、社会保障削減で負担が増え、格差と貧困は広がるばかりです。
 ところが政府は国民の暮らしの困難をよそに、軍事費の2倍化、一層の社会保障費削減をすすめ、デジタル化推進、公務の民間開放、巨 額の税金を投入する大阪万博を推進するなど大型開発に突き進んでいます。
 山下知事は、就任以来、県民の願いであった大型開発の見直し・中止の決断をされました。新年度予算では、県民の暮らしを守るため に、どのように取り組まれるのか、注目されています。
いまこそ、冷たい国の政治から、県民の暮らしと営業を守る防波堤として、住民福祉の増進という地方自治体の役割を果たしていただきた い。
 県民から寄せられた要望をまとめ、来年度予算に反映していただきますよう、申し入れます。
 

(1)物価高騰から暮らしを守る対策
(2)中小企業・小規模事業者など県内産業と雇用への支援拡充
(3)コメ農家・小規模農家をはじめ、農林水産業を支える
(4)観光対策
(5)新型コロナウイルスをはじめ感染症から命を守る保健医療体制を
(6)医療・介護体制の充実
(7)高齢者の福祉・医療の拡充
(8)障がい者・難病患者等への支援の拡充
(9)子ども・若者・学生への支援と教育条件の整備拡充
(10)文化遺産・自然と景観を守る
(11)芸術・文化スポーツへの支援
(12)ジェンダー平等・人権擁護の推進
(13)気候危機打開・省エネ・再エネの推進
(14)防災対策の強化
(15)地域交通の整備、交通バリアフリーの推進
(16)不要不急の事業・大型開発の見直し、大阪万博、カジノの中止を求める
(17)平和と憲法を守り、住民福祉の機関としての地方自治を守る

(1)物価高騰から暮らしを守る対策
 1、地域経済と暮らしを守るために、緊急に消費税減税を行い、社会保障などの財源は大企業・富裕層へ応分の負担を求めるように国に 求めること。
 2、インボイス制度の廃止を求めること。
 3、中小零細事業者が事業の継続ができるように、燃料費支援、家賃や水光熱費、リース料など固定費への補助を行うこと。
 4、ゼロゼロ融資等の返済支援を強化して相談体制、借り換えや返済猶予など弾力的に対応すること。
 5、中小企業支援と一体に最低賃金を1500円へ引き上げ、全国一律最低賃金制度とするように国に求めること。
 6、生活保護制度を必要な人が利用できるように、市町村と協力して捕捉率の向上に努めること。
 7、生活保護世帯、低所得者世帯にたいして、エアコンの購入・設置費用と電気代の助成を行うこと。

(2)中小企業・小規模事業者など県内産業と雇用への支援拡充
 1、小規模企業振興条例を生かして、実態調査を行い事業者の意見を反映した施策を進めること。
 2、靴下・繊維産業など地場産業の対策をすすめること。
 3、仕事と雇用を増やす一般リフォームも含めて、リフォーム助成制度を充実すること。
 4、公契約条例を見直し、ふさわしい賃金水準の設定にすること。
 5、会計年度任用職員の待遇・労働条件を改善して、正規雇用化すること。国に対して労働者派遣法を抜本的に改正して、正社員化と均 等待遇を求めること。
 6、増加している外国人労働者の実態をつかみ、行政サービスの利用など地域で安心して生活できるように支援すること。
 7、大和高田市立病院のJR高田駅東側への移転計画は立ち止まったものの、市は引き続き駅前移転を検討している。それに伴う産業会 館の解体については認めず、産業会館を生かした街づくりをこそ進めること。

(3)コメ農家・小規模農家をはじめ、農林水産業をささえる
 1、低価格となっているコメの生産費の補填を県として実施すること。
 2、県産米や県産小麦をはじめ、学校給食に地産農作物の活用を進めること。
 3、オーガニック給食推進を支援して県としても進めること。
 4、肥料や飼料・燃料の高騰対策を継続するよう国に求め、県としても独自の支援をおこなうこと。
 5、地産地消を進め、農産物直売所へ支援を強めること。
 6、担い手支援は、認定農家や専業農家に限らず、農業にかかわるすべての農家に対象を広げること。
 7、飼料・燃料高騰などで苦しむ畜産農家への支援を強めること。
 8、鳥獣被害対策を抜本的に強化する予算を拡充すること。
 9、種子条例を制定すること。
10、中山間地直接支払制度の減額をしないように国に求めるとともに、不足する場合、県が補填すること。
11、公共事業に県産木材の活用を促進し、県産材利用の拡大をすすめること。
12、県産木材利用の住宅への補助や融資、利子補給などを拡充すること。
13、間伐材や木くずの燃料化、再生可能エネルギー事業の促進をはかること。
14、森林災害を防ぐために、森林組合への支援や市町村の職員体制強化の支援を行い、森林の実態調査や、対策を進めること。

(4)観光対策
 1、奈良県の歴史・生活文化・豊かな自然環境に根差した貴重な資源・地域の宝物であり3つの世界遺産、世界遺産産暫定一覧表に追加 された地域も含めてこれらを生かし、地場産業や伝統産業など地域経済の振興も含めた観光政策とすること。
 2、古都奈良の魅力を発信して、長期滞在型観光やリピーターを増やす取り組みを行うこと。
 3、開発中心型ではなく、住んでよし、訪れてよしといえるように、地域経済と共存できるように地元事業者の参画、連携を強めるこ と。
 4、障害者も利用できるよう、観光地の温泉のバリアフリー化を支援すること。

(5)新型コロナウイルスをはじめ感染症から命を守る保健医療体制を
 1、コロナ禍の教訓を踏まえ、今後の新興感染症対策を強化するためにも、保健所機能の強化と保健師の増員をすること。
 2、新型コロナウイルス感染症の抗ウイルス薬の窓口負担、入院医療費の患者負担の軽減策の縮小や病床確保料の対象限定など、患者負 担増や医療現場への負担増を見直すこと。
 3、改訂される保健医療計画で、コロナ禍の教訓を生かして感染症対策全般の強化をすること。
 4、ケア労働者の処遇改善
 5、保育・学童保育・児童養護施設などの児童福祉、高齢者、障がい者福祉の携わる介護職などの福祉労働者の処遇・賃金を抜本的に引 き上げるよう国に求めるとともに、県としても支援すること。

(6)医療・介護体制の充実
 1、県内の医師の増員に取り組み、国に医師の増員を進めるよう求めること。
 2、看護職員の養成、定着対策を強化すること。
 3、県内で働く介護職員の実態調査を行って、介護職員確保対策を進めること。
 4、訪問看護師の養成と在宅診療体制を強化すること。
 5、国民健康保険への国庫負担金の増額を国に求めること。
 6、国民健康保険料の減免制度は、恒常的生活困窮者を対象とすること。
 7、県総合医療センター等の公的医療機関で無料低額診療を実施すること。
 8、国に対して院外処方箋を受け付ける保険薬局等も無料低額診療事業の対象とするよう求めること。
 9、マイナンバーカード保険証の強制はやめ、これまで通り紙の保険証を残すように国にもとめること。

(7)高齢者の福祉・医療の拡充
 1、介護保険料・利用料の減免制度を県として作ること。
 2、介護保険制度の見直しで、利用料の負担増や利用制限はしないよう国に要請すること。
 3、65歳以上高齢者の医療費助成制度を実施すること。
 4、加齢性難聴の補聴器購入に助成制度を作ること。
 5、特別養護老人ホームや小規模多機能施設を増設すること。
 6、高齢者熱中症予防の実態調査や、クーリングシェルターの設置など、市町村と協力して熱中症から命を守る対策を強化すること。
 7、実質年金の減額をしないように国に求めること。
 8、認知症疾患医療センターを増設して、アウトリーチや相談員への支援を拡充すること。
 9、既存の中層県営住宅にエレベーターやスロープなどを整備すること。
10、高齢者が民間住宅を借りられるように公的保証制度を創設すること。

(8)障がい者・難病患者等への支援の拡充
 1、障がい者総合支援法を見直し、総合福祉部会でまとめた「骨格提言」にそった制度を実現するように国に求めること。
 2、障害のある人への福祉医療制度は、より軽度の障がい者や難病患者も対象とするとともに、現物給付で窓口無料とすること。
 3、障がい者福祉施設の深刻な人材不足の実態を把握して、求人対策を強化すること。
 4、難病患者が利用しやすい利便性が良い場所に、難病支援センターを設置するとともに、患者団体の活動を支援すること。


(9)子ども・若者・学生への支援と教育条件の整備拡充
 1、認可保育園の低すぎる保育士配置基準を抜本的に改善することを国に求めるとともに、県としても加配をすすめること。
 2、児童相談所の児童福祉司と児童心理司の増員と育成を計画的に進めること
 3、行き届いた教育の保障のために小中学校で30人学級を早期に実現すること。教員未配置をなくすために計画的に正規雇用教職員を 増員すること。
 4、増え続けるいじめや不登校などに対応し、子どもたちの心のケアを進めるために、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーを全 校配置して、正規雇用とすること。
 5、小中学校の給食費を無償にするために県の支援を行うこと。
 6、県独自に大学との連携で学生支援の窓口を作り、困窮する学生への支援を行うこと。
 7、県立大学の授業料減免や入学金の減免をおこない、県としても給付型奨学金制度を実施すること。
 8、ICTの活用に当たっては新たな格差を生まないように、機器の購入や通信環境整備などは公費で行うこと。県立高校生のパソコン 購入は公費負担とすること。
 9、学校体育館のエアコン設置の補助を拡充して推進すること。
10、学校のトイレ改修と生理用品をすべての学校トイレに設置すること。
11、子どもの医療費助成制度は高校卒業まで現物給付として、一部負担金をなくすこと。
12、国民健康保険のこどもに係る均等割り保険料を廃止するよう国に求めること。
13、特別支援学校の新設と既設の学校の環境整備をすすめること。
14、住民合意のない学校統廃合や小中一貫校、義務教育学校の創設を進めないこと。
15、不登校問題について教職員や保護者が気軽に相談できるセンターをボランティア団体や専門家などの協力を得て各所に開設するこ と。フリースクールなどの自主的な取り組みを支援すること。


(10)文化遺産・自然と景観を守る
 1、平城宮跡国家公園事業については、改めて県民的議論を行うこと。東側、南側地域の整備計画についても、県民の意見を踏まえて、 世界遺産にふさわしい自然と調和した歴史的景観、古代に思いをはせることができる静かで落ち着いた空間を大切に、史実に基づいた整 備、地下埋蔵文化財の保全をはかること。
 2、奈良少年刑務所の保存と活用について、国が進めている建物の耐震保存と奈良監獄の歴史を展示する資料館について県としても、史 実を正確に伝え生かすことができるよう国と協力すること。
  

(11)芸術・文化スポーツへの支援
 1、児童・生徒を対象とした芸術鑑賞や創作活動の機会を増やすための支援事業を抜本的に拡充すること。
 2、県内アーチストや文化活動を支援する基金や補助制度を作り、創作活動や練習・発表等への支援を強化すること。
 3、県立スポーツ施設のバリアフリー化を進め、古くなった施設の改修を急ぐこと。
 4、県民が地域でスポーツを楽しめる施設をきめ細かく、計画的に整備すること。
 5、子どもたちが安全に自由に利用できる児童公園や子ども広場などを身近な場所に整備すること。

(12)ジェンダー平等・人権擁護の推進
 1、女性支援法にもとづく基本計画の策定にあたり、支援団体、有識者、自治体関係者が参加する検討会を設置して、実効性ある計画と すること。
 2、女性支援の相談員は、正規雇用として専門家としてふさわしい処遇とすること。
 3、あらゆる意思決定の場に女性の参加を保障するとりくみをすすめ、各種審議会の女性委員の比率を5割とすること。
 4、リプロダクティブヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)を重視して子どもたちが年齢・発達に即した科学的な「包括的性 教育」を受けられるようにすること。
 5、公立・私立学校や公共施設、駅などのトイレに生理用品を配備するように推進すること。
 6、県としてパトナーシップ・ファミリーシップ制度を創設すること。
   
(13)気候危機打開・省エネ・再エネの推進
 1、再生可能エネルギーの利用促進のためにより積極的な目標をもって取り組むこと。
 2、住宅の断熱化など省エネ・再エネ導入を促進する補助事業を抜本的に拡充すること。
 3、学校や公共施設の省エネ・断熱化、太陽光パネル等の設置や省エネ機器の導入等市町村が行う事業に対して補助をすること。
 4、ごみ処理広域化計画を改め、ごみの徹底した分別や減量化を促進すること。
 5、平群町で進められている森林を壊し水害のおそれがあると住民が反対しているメガソーラー開発の許可取り消しを求める。

(14)防災対策の強化
 1、激甚化する災害、予想される南海トラフ地震、直下型地震などに対して、緊急治水対策や山林整備、急傾 斜地対策などハード・ソフ ト一体となった事前防災対策を加速すること。
 2、公共事業・民間業者の開発も含めて、防災アセスメントを義務付け、防災の観点から指導監督を強めること。
 3、避難所となる施設の耐震化を急ぎ、体育館の内装・天井などの安全対策を徹底し、住宅の耐震化を進めるための支援策を強化するこ と。
 4、避難者の尊厳を守る立場から一人当たりの面積、トイレの数など定めた避難所の国際基準に基づいて、避難所設置運営基準を改善し て、増設に取り組むこと。高齢者や乳幼児、障がい者、女性、セクシャルマイノリティなどに配慮して対策をきめ細かに行うこと。
 5、地域の防災力強化にためにも消防署員を増員すること。
   

(15)地域交通の整備、交通バリアフリーの推進
 1、京奈和道大和北道路のトンネル区間については、整備効果が認められないことや、大深度地下トンネル工事の安全性も担保されてな いこと、工事によるとか数の変化から平城京の地下埋蔵文化財に影響を及ぼす恐れもあり、中止すること。
 2、高速自動車道中心の道路政策から生活道路を中心として、歩道や自転車道の整備など安全対策を強化すること、
 3、道路の白線や横断歩道の白線など交通安全標識の総点検を行って、改善を進めること。
 4、鉄道駅の無人化、運行本数の削減の中止を求めること。駅のバリアフリー化を促進すること。
 5、バス路線の減少・廃止などで公共交通がない地域の移動手段をまもるために、デマンドタクシーや巡回バスなどきめ細かに運航でき るよう市町村への支援を強化拡充すること。

(16)不要不急の事業・大型開発の見直し、大阪万博、カジノの中止を求める
 1、リニア新幹線の建設については、深刻な環境破壊や多大な電力消費、安全性についての不安、工事費用の増加などから中止を求める 声が広がっている。奈良市付近駅の誘致を見直すこと。
 2、関西万博は「IR」カジノと一体にすすめられており、会場建設費、インフラ整備のために膨大な国民負担となる。中止を求めるこ と。

(17)平和と憲法を守り、住民福祉の機関としての地方自治を守る
 1、奈良県として、核兵器廃絶に向けた取り組みを推進し、政府に対して、核兵器禁止条約に参加するよう求めること。
 2、奈良県に自衛隊駐屯地の誘致は行わないこと。
 3、自衛官募集業務へ市町村の協力要請や個人情報保護に反する「適齢者名簿」提出などの押しつけはやめるよう国に求めること。
 4、奈良県の関西広域連合への全部参加はしないこと。
 5、関西広域連合が関西財界とともに推進する都道府県域を超える広域ブロックや権限強化は、地方自治に反するものであり、国の出先 機関移管や道州制の検討は中止するよう求めること。
 6、市町村の自治を侵害する奈良モデルを中止すること。真に対等な関係に改めること。

以上